オリエント急行殺人事件を味わう

この本で味わいたい文章は、わりとはじめのあたりにありました。

英文から引用してみましょう。引用はこちらの本から。

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

 

'Ah!' he sighed. 'If I had but the pen of a Balzac! I would depict this scene.'

「ああ!」ブークはためいきをついた。「わたしにバルザックのごとき文才があればなあ! この場面を小説にできるのに。

 

He waved his hand.

片手をふってみせた。

 

'It is an idea, that,' said Poirot.

「いい考えですな」ポアロは言った。

 

'Ah, you agree? It has not been done, I think?

「お、賛成してくれますか。まだ誰も書いたことがないと思いますよ。

 

And yet--it lends itself to romance, my friend.

だがーーおもしろい小説になることでしょう、友よ。

 

All around us are people, of all classes, of all nationalities, of all ages.

あらゆる階級、あらゆる国籍、あらゆる年齢の人が集まっている。

 

For three days these people, these strangers to one another, are brought together.

これから三日間、この人々が、知らない者どうしが、一緒に過ごすことになる。

 

They sleep and eat under one roof, they cannot get away from each other.

ひとつ屋根の下で眠り、食事をする。離れてすごすことはできない。

 

At the end of three days they part, they go their several ways, never, perhaps, to see each other again.'

その三日間が終わると、別れていく。それぞれの目的地へ向かい、おそらく、二度と会うことはできない」

山本やよい訳)

 

オリエント急行、この夜行列車での事件を物語るセリフですね。

 

夜行列車にも乗りたくなります。

映画版もぜひどうぞ。

 

 

オデュッセイア

オデュッセイアに取り組むにはまずこのマンガでしょう。

 

オデュッセウスの航海―マンガ・ギリシア神話〈8〉 (中公文庫)

オデュッセウスの航海―マンガ・ギリシア神話〈8〉 (中公文庫)

 

これであらすじがわかります。

 

原作もありますが順次広げて解説していきます。

 

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

 

 

 

ホメーロスの オデュッセイア物語(上) (岩波少年文庫)

ホメーロスの オデュッセイア物語(上) (岩波少年文庫)

  • 作者: バーバラ・レオニ・ピカード,高杉一郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/02/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

オリエント急行殺人事件

オリエント急行殺人事件を特集していきます。

 

まずは原文の本を2つ。 

Murder on the Orient Express (Poirot) (English Edition)

Murder on the Orient Express (Poirot) (English Edition)

 

 活字がさすが本場の洋書という感じです。

 

洋書は少し開きにくいのが難点ですね。

 

もう一つは講談社の英語文庫。

オリエント急行殺人事件 MURDER ON THE ORIENT EXPRESS (KODANSHA ENGLISH LIBRARY)

オリエント急行殺人事件 MURDER ON THE ORIENT EXPRESS (KODANSHA ENGLISH LIBRARY)

 

 英文と注釈しかありません。注釈も難しい単語の和訳のみです。

解説やコメントも少しあると嬉しいですね。

和訳書も次回紹介していきます。

ホメロスのイリアス

 

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

 

 

 

イリアス〈下〉 (岩波文庫)

イリアス〈下〉 (岩波文庫)

 

 ホメロスのイリアスを攻略中です。

 

トロイア戦争の一部の話のようで、「アキレス物語」とでもいったらよい作品です。

映画「トロイ」がとても参考になりました。

 

トロイ (字幕版)

トロイ (字幕版)

 

 ブラッド・ピット、かっこいいですね。アキレス役です。

最期は踵に矢を打たれて死んでしまいます。

 

漫画なら里中満智子「トロイの木馬」が参考になります。 

トロイの木馬―マンガ・ギリシア神話〈7〉 (中公文庫)

トロイの木馬―マンガ・ギリシア神話〈7〉 (中公文庫)

 

 これを読めばキャラクターが頭に入って、原文も読みやすいですね。

 

 阿刀田高先生のエッセイも、岩波文庫を読む前に読んでおきたいです。

ホメロスを楽しむために (新潮文庫)

ホメロスを楽しむために (新潮文庫)

 

 里中満智子さんが解説を書いています。

 

 イリアスの一番古い訳の新版がこちら。

イーリアス

イーリアス

 

 五・七調でとにかく難解ですが、いつか読みこなせたら最高だろうな…。

 

次回は続編「オデュッセイア」も特集します。

 

モルグ街10日目

Let it not be supposed, from what I have just said, that I am detailing any mystery, or penning any romance. 

いま言ったことから、私がなにか神秘的なことを語ったり、なにかロマンスを書いたりしようとしているなどと思ってはならない。

 penningとはpen ペンで書くという動詞のing形ですね。

 

What I have described in the Frenchman, was merely the result of an excited, or perhaps of a diseased intelligence.

私がこのフランス人について語ったことは、単に興奮した、もしかすると一種の病的な知性の結果にすぎないのだ。

describe 描写する。descriptionで描写です。

 disease 病に冒される、という動詞です。名詞で病気、もあります。

 

But of the character of his remarks at the periods in question an example will best convey the idea.

 だが、こんなときの彼の言葉の調子については、例を挙げるのがいちばんよくわかるだろう。

 bestはこの場合副詞のような役割ですね。

convey 連れてくる、もたらす。例を挙げるのがこの考えを一番よくもたらすでしょう、のような直訳です。

 

 

モルグ街9日目

At such times I could not help remarking and admiring (although from his rich ideality I had been prepared to expect it) a peculiar analytic ability in Dupin. 

そうしたときに私は、デュパンの特殊な分析的能力を認めたり、感嘆したりせずにはいられなかった(彼の豊富な想像力から十分に期待していたことだが)。

 

 He seemed, too, to take an eager delight in its exercise — if not exactly in its display — and did not hesitate to confess the pleasure thus derived. 

彼はまた、その能力を働かせることを――なにもそれを見せびらかすことではないとしても――たいそう喜ぶらしく、またそのことから生ずる愉快さを、私にあっさり白状しもした。

hesitate ためらう。hesitationだとためらうこと、ためらい、です。

confess 告白する、白状する

 derive 由来する

 

He boasted to me, with a low chuckling laugh, that most men, in respect to himself, wore windows in their bosoms, and was wont to follow up such assertions by direct and very startling proofs of his intimate knowledge of my own. 

彼は、低い含み笑いをしながら、たいていの人間は自分から見ると、胸に窓をあけているのだ、と私に向って自慢し、そういうことを言ったあとでは、いつも、私の胸のなかをよく知っている実にはっきりした驚くべき証拠を見せるのであった。

 boast 自慢する

chuckle くすくす笑う

bosoms 胸。breastとほぼ同じです。

proof 証拠。prove証明する、です。

intimate 親しい。この場合心の奥の、というニュアンスです。

 

 His manner at these moments was frigid and abstract; his eyes were vacant in expression; while his voice, usually a rich tenor, rose into a treble which would have sounded petulantly but for the deliberateness and entire distinctness of the enunciation.

 そんなときの彼の態度は冷やかで放心しているようだった。眼にはなんの表情もない。声はいつもは豊かな次中音テナーなのが最高音になり、発音が落ちついていてはっきりしていなかったら、まるで癇癪かんしゃくを起しているように聞えたろう。

 manner 態度。日本語のいわゆる「マナー」はmannersで複数形です。

frigid 冷淡

vacant 空き。飛行機で、トイレが空室の場合この表記ですね。中に人が入っている場合はoccupied です。

treble 最高音

but for 〜がなかったら、という仮定法です。発音がはっきりしなかったら、という仮定ですね。

dintinctness 明確

enunciation 発音

 

相棒の「探偵」の様子をとつとつと語っていますね。このあたりのくだり、グレート・ギャツビーととてもよく似ていますね。

 

 Observing him in these moods, I often dwelt meditatively upon the old philosophy of the Bi-Part Soul, and amused myself with the fancy of a double Dupin — the creative and the resolvent.

こんな気分になっている彼を見ていると、私はよく二重霊魂という昔の哲学について深く考えこみ、二重のデュパン――創造的なデュパンと分析的なデュパン――ということを考えて面白く思うのであった。

dwell on ゆっくり考える

resolvent 分析的 

森鴎外の訳したモルグ街

明治の文豪・森鴎外が翻訳した「モルグ街の殺人事件」もあります。

 

エドガア・アルラン・ポオ Edgar Allan Poe 森林太郎訳 病院横町の殺人犯 THE MURDERS IN THE RUE MORGUE

 

森鴎外の本名・森林太郎として訳されています。こちらは英語から日本語でなく、ドイツ語から日本語に訳したものです。

 

そのため多少文章が対応していない部分もありそうです。

 

文語調の格調高い文章で、現代では少し読みにくいですね。

 

参考までに。